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2018.7.8

安来散策 伝統にとらわれない、楽しさひろがる 藍染め工房「天野紺屋(こうや)」

こんにちは。

エクステリアプランナーの前田です。

安来市広瀬町にある、藍染め工房「天野紺屋(こうや)」さんにお邪魔させて頂きました。

天野紺屋さんは、1870年に創業された糸染め専門の紺屋さんです。

現在は、糸染めだけでなく、

型紙を使った技法「型紙染め」で染めた布で作った商品の開発、販売にも力を入れておられます。

お話を伺ったのは、

5代目を受け継ぐ、天野 尚(ひさし)さんです。

5代目 天野 尚さん

5代目 天野 尚さん

天野さんは、大学時代を京都で過ごし、染織を学びました。

そして、大学を卒業したあと、家業に入り、祖父「天野 圭」さんの元で、藍染めを学びました。

三代目 天野 圭さん

三代目 天野 圭さん

しかし、祖父 圭さんが早くして病に倒れ、

まだまだ、学び足りない時に、家業を任される形となります。

そこからの数年間は、本当に苦労が続き、大変な日々だったと、尚さんは振り返ります。

藍染めは、染料を作る事がとても重要な仕事となります。

原料となる「たで藍」の葉を乾燥させ、

藍染めの原料

藍染めの原料

醗酵させて作られる「すくも」と呼ばれる物を、

原料を醗酵させた「すくも」

原料を醗酵させた「すくも」

染織に使う龜「かめ」に、水や石灰などと一緒に入れて、

独自の調合で染料を作り、さらに醗酵させます。

染色を行う龜(かめ)

染色を行う龜(かめ)

染料の調合のバランスは季節や湿度で、微妙に変化する為、経験が必要となります。

見た目や匂い、時には少し舐めてみたりして、五感を使い、体で覚えていきます。

泡が立ってくると、良く醗酵していて、うまく染まる状態だそうです。

醗酵すると泡立つ

醗酵すると泡立つ

「まだ、技術を完全には体で覚えていなかった為、

染料をうまく作る事が出来ず、きちんと染まらなかったりして、苦労の日々が続きました。」

と大変だった当時を振り返る尚さんです。

尚さんが染織を行う作業を見させて頂く事ができました。

染織に使う糸は、全国から依頼があり、送られて来るそうです。

カラーサンプルがあり、染織の工程を何度も繰り返すと、どんどん色が濃くなって紺色に近くなって行きます。

仕上がりのカラーサンプル

仕上がりのカラーサンプル

まず、糸を染料に漬けます。

染料に漬けます

染料に漬けます

約1分程で、染料が糸に染み込み、色素が糸に付き、色が付きます。

染料から上げ、絞ります。

漬けた後、絞ります

漬けた後、絞ります

染職の様子

染職の様子

絞ったあとは、糸をほぐします。

このほぐす作業によって、糸に付いている藍の色素が定着する為、とても重要な作業だという事でした。

絞ったあと、ほぐします

絞ったあと、ほぐします

注文に応じて、規定の色になるまでこれを繰り返します。

一番濃い紺色にする為には20回ほどの作業が必要との事で、とても大変な作業だと感じました。

完成した糸は、洗って干されます。

藍色のグラデーション

藍色のグラデーション

広瀬町には「広瀬絣(かすり)」という織物があり、藍染めの糸を用いて、作られています。

現在4代目当主である、お父様は広瀬絣のはた織りの職人さんでもあります。

工房の奥には、はた織りを行う工房もあり、こちらも作業の様子を見させて頂きました。

はた織りの様子を見せて頂いたのが、尚さんのお父様、天野 融(とおる)さんです。

はた織りの様子

はた織りの様子

工房には、どれも古くから使われている機械が並んでいました。

糸を巻く機械

糸を巻く機械

自動はた織り機

自動はた織り機

それぞれの機械についても丁寧に説明をして頂きました。

古い物ですが、とても機能的に作られていて、これを見るのも面白いです。

糸を巻く機械について説明して頂いています

糸を巻く機械について説明して頂いています

また、道路に面した表側は実際に商品を購入することができる、展示スペースとなっています。

お店の外観

お店の外観

店舗で扱う商品の制作、接客などは、ご当主 融さんの奥様と、尚さんの奥様がされています。

染物を使った小物

染物を使った小物

販売している小物

販売している小物

糸も販売しています

糸も販売しています

実際に購入できる商品

実際に購入できる商品

私は、名刺入れを購入させて頂きました。

名刺入れ

名刺入れ

天野さんに、今後の展望について伺いました。

「藍染めは、一日一日で日々違う仕上がりになり、その瞬間を楽しむ事ができます。」

「伝統を受け継ぐのは、もちろんですが、まず自分自身が楽しむ事。」

「楽しみながら、色々なことに挑戦していきたい。」

広瀬町に唯一となった藍染め工房ですが、守っていく事に固執せず、

自由な発想で「楽しく」商売を続けていく事が、視野を広げ、色々な可能性を生み出しており、

しっかりとした技術によって「楽しい」空間が作られているのだと感じました。

最後に、恐縮ながら、一緒に写真を撮らせて頂きました。

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お話をお聞きしていると、とても楽しく、

気付けば、予定よりも随分と長居をしてしていました。すみません(^_^;)

楽しみながら、仕事をしておられる空間は、お客様も優しい気持ちになり、

居心地の良い雰囲気作りにつながっているのかもしれませんね。

楽しい時間をありがとうございましたm(_ _)m